医療機関の経営を守る「個別指導・監査対応」〜弁護士に依頼する重要性とリスクマネジメント〜

医療法人の理事長やクリニックの院長にとって、厚生労働省(地方厚生局)から通知される「個別指導」は、経営上極めて重大なイベントの一つです。個別指導は原則として教育的指導とされていますが、その対応を一つ誤れば「監査」へと移行し、最悪の場合は「保険医療機関の指定取消」や「保険医の登録取消」という、事業の存続そのものを揺るがす事態に直面しかねません。

本記事では、医療機関をはじめとする多数の企業法務を手掛ける当事務所の視点から、個別指導における弁護士活用の重要性と、平時からのリスクマネジメントについて解説します。

経営リスクとしての「個別指導」と「監査」

厚生局による指導には、主に開業から約1年以内に行われる「新規個別指導」と、レセプトの高点数や情報提供などを端緒とする「個別指導」があります。

指導の場において、カルテの記載不備や算定ルールの解釈の相違などを厳しく追及された際、焦りから事実と異なる回答をしてしまったり、法的な根拠を持たずに反論してしまったりするケースは少なくありません。調査側に「意図的な不正請求」や「隠蔽」の疑いを抱かせた場合、指導は中止され、より厳格な「監査」へと移行します。

監査の結果、不正請求が認定されれば行政処分が下され、原則として5年間は保険診療を行うことができなくなります。これは医療機関にとって事実上の倒産リスクを意味するため、個別指導は「単なる行政手続き」ではなく「重大な経営リスク」として捉える必要があります。

個別指導・監査対応に弁護士が介在する3つの意義

経営リスクを最小限に抑えるため、個別指導のプロセスに弁護士(代理人)を関与させる医療法人が増えています。弁護士に依頼することで、以下のメリットが得られます。

行政手続きの適正化と不当な追及の牽制(帯同)

個別指導の場に弁護士が帯同(同席)することは、法的に認められた正当な権利です。弁護士が同席することで、担当技官による威圧的な言動や誘導尋問を牽制し、手続きが適正かつ冷静に進行するよう法的な盾となります。これにより、医師の心理的負担は大幅に軽減され、不用意な発言による監査移行リスクを防ぐことができます。

膨大な資料準備と「法的ディフェンス」の構築

個別指導では、指定されたカルテや帳票類などの膨大な資料を短期間で準備する必要があります。弁護士は事前にこれらの資料を精査し、指摘が予想されるポイントを法的・客観的な視点から洗い出します。当日に想定される質疑応答のシミュレーションを行うことで、経営者と現場の医師が安心して当日を迎えられる体制を構築します。

自主返還における適正な交渉

指導の結果、算定要件を満たしていないとして診療報酬の自主返還を求められることがあります。しかし、行政側の指摘が常に正しいとは限りません。弁護士は、指摘された内容に法的な妥当性があるかを検証し、過大な返還要求に対しては医療機関の代理人として適正な額への交渉を行います。

「予防法務」としての顧問弁護士の役割

個別指導の通知が届いてからの「事後対応(臨床法務)」も重要ですが、医療法人の経営を安定させる上で最も確実なのは、日頃から指摘を受けない体制を構築する「予防法務」です。

日々のカルテ記載のあり方、最新の算定要件の解釈、スタッフの労務管理など、日常業務に潜む法的リスクを平時から洗い出し、コンプライアンス体制を強化しておくことが、結果として個別指導や内部告発のリスクを最小化します。

医療法務における当事務所のアプローチ

当事務所では個別指導や監査への対応はもちろん、企業経営の中で発生する労務問題や契約書の精査など、医療機関の安定経営を法的な側面から総合的にサポートいたします。医療コンプライアンス体制の強化や、万が一の行政対応にご不安を抱える経営者様は、当事務所へご相談ください。

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